eatlocaljapan’s diary

日本のゴハンは美味しい!

歌わない踊らないインド映画

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インド映画といえば華麗なミュージカル仕立てというのが定番で、正直言ってそれほど興味がわくものではなかったのですが、ふとしたきっかけでみた2本「The Lunchbox (めぐり逢わせのお弁当)(2013)」と「English Vinglish (マダムインニューヨーク)(2012)」にとても驚かされました。

The Lunchboxの方は、ムンバイのお弁当配達システムの誤配から始まる、初老の男性と家庭に疲れた女性の手紙のやりとりと心の触れ合い、「マダム、、」の方は、専業主婦がもがきながらも、自分らしい生き方を異国で探すといった、非常に普遍的で深みのあるテーマです。

特にLunchboxは、インドの日常生活を(多分)かなりリアルに写しながら、心の動きを静かに淡々と描きだしていきます。脚本やカメラワークいろいろと素晴らしいと思うのですが、やはり主役の演技が本当に感動的。ほんの数分で共感モードに入ります。

ストーリー自体は割と良くあるパターンで、最後に主役2人が新しいパートナーとして人生を再スタートするのか、という部分はぼかして終わります。皆さんの想像にお任せしますと。

ここはどうも賛否両論あるようですが、アジアの価値観を念頭に置いた良いエンディングだったのではないかなと思っています。合理的に考えるなら、不幸な関係を終わりにして、新しいステージに移ることは全く問題ない、というより幸せを追求するためには推奨される行動でしょう。希望に満ちたハッピーエンドで終わってくれた方がすっきりはします。

でも、勝手にアジア的道徳というしばりをつけるとしたら、そこは合理性や論理性とは一歩離れた視点があるんじゃないかと思うのです。自分の人生はすべて自分のものかというとそうではない、自然や社会に生かされているのだ、というポジティブな諦めというのでしょうか。一歩間違うと他力本願や努力の否定といった情けない結果を生みがちな考えですが、人生はそんなに決めたとおりには進みません。新しい生活が心を満たしてくれたとしても、ずっと、そして最終的にハッピーなのかという確証はどこにもありませんし、幸福の度合いは測りようもありません。更にアジアの社会では、こういう事情が周りに知られると、あまり良い顔をされないでしょう。それが本人たちの関係にも影響を及ぼし、だんだんとギクシャクしていく可能性も大きいのです。

いろいろなリスクを推し量ったら、今の状態で我慢した方が結果的に皆が幸せだったということも大いにありえます。旦那さんの無関心も数年たてば心が戻ってくるかもしれませんし、なにより子供の父親は今の旦那さんです。保守的で古く悲しい考えですが、長期的なつながりを大切にする、周りへの気遣いといった価値観のコインの裏表でもあるのです。

個人的には、自分の人生はさくっと自分で決めて生きていきたい派ですが、抗えないものを全く否定するのも「違う」ような気がします。主人公の決意は明確に示されているとはいえ、どちらとも決め打ちしなかった今回のエンディングは、仏映画ともまた違った余韻があって、大きくうなずいてしまったというわけです。

出てくるカレーのお弁当もひたすら美味しそうで、高級シェフじゃなくても、丁寧に作られたお料理は無敵だなと思いました。インドに行く機会があれば、ぜひこういう家庭的な食事を探してみたいです。

ちなみにマダムインニューヨークは、主役のSrideviという女優さんが撮影当時50才だったということを知り驚愕。どうみても若奥様です、めっちゃ美人の。